「最後に鶴岡八幡宮に集合ってこと考えたら、初めに江ノ電で江ノ島まで行って、そこから引き返してくるのがよさそうだよね」

「なあ、これ見て。江ノ島に洞窟探検がある。水族館やめて、こっち行かね?」

「えー、洞窟よりイルカが見たいよ」

「イルカは、他の水族館でも見れるじゃん」

 楽しそうにあれやこれやと意見を出し合っているみんなのことを、わたしは一歩引いたところで見つめる。

 わいわい、ガヤガヤ。わたし達の班のスケジュールは、まだ決まらない。

「もう、多数決で決める?」

「そうしようか。じゃあ、水族館がいい人〜」

「はーい」

 みさとちゃんの声に合わせて、みさとちゃんと綾香(あやか)ちゃんが同時に手をあげる。

「じゃあ、洞窟がいい人〜」

「はーい」

 大和(やまと)くんの声に合わせて、河井(かわい)くんが両手を挙げる。

「よし、3対2で洞窟決定!」

「何言ってんの。両手上げはズルだから、2対2」

 にっと笑い合って、ハイタッチする大和くんと河井くんのことを、みさとちゃんがぷくっと頬をふくらませてかわいく怒る。

「じゃあさ、もう、みさとと大和でじゃんけんしたら?」

 綾香ちゃんが笑って言ったとき、

「あ、待って。心桜(こころ)、手あげてなくない?」

 ふいに、大和くんがわたしに視線を向けた。その瞬間、班のみんながわたしの存在を思い出す。