季節はずれの桜の下で


 だけどクラスメートたちの半分くらいは、先生の話を信じていないみたいだった。

 校庭の桜の木のウワサには、まだ続きがあるからだ。

 桜の木は、何年か前から生徒たちがすぐそばまで近づけないように周りを柵で囲まれている。樹齢の長い桜の木は幹が空洞になっていて、倒れてくる危険があるからだ。

 何年も前から、安全のためにそろそろ切るべきだと言われているらしいのだけど、校庭の桜の木はずっと切られないままでいる。

 これまでに何度か桜の木を切ろうとしたのだが、作業員がケガをしたり、急に天気が大荒れになったり。桜の木を切ろうとすると、いつも何かトラブルが起きるらしい。

 そういうトラブルは全部、死んでしまった男の子の幽霊が桜の木を切られないようにジャマしてるからだって言われている。

 だから、校庭の桜が季節はずれの花を咲かせたのも幽霊のしわざなんじゃないか。

 クラスメートたちは、面白半分にウワサしていた。

 紅葉したり、葉っぱが落ちて枝だけになっている木がほとんどの秋の校庭で、桜の木の周囲だけあたたかい春の気配がする。枝いっぱいに花を咲かせる桜の木は、そこだけが別世界みたいで、すごく綺麗だ。

 ほんとうに怪奇現象なのかな。こんなに綺麗な怪奇現象ってある……?

 きのうよりも満開に近付いている桜の木を見つめながら、ぼんやりと思う。