「ほんとうに行かないの?」
校外学習の日の朝。集合時間から三十分以上遅れて家を出ようとするわたしに、おかあさんが尋ねてきた。
「今から車で横浜駅まで送っていけば、なんとかギリギリ間に合うよ」
「いい。今日は保健室で勉強する」
「わかった。いってらっしゃい」
少し寂しそうに手を振って送り出してくれたおかあさんは、ほんとうはわたしに校外学習に行ってほしかったんだと思う。
ごめんね。
心の中でおかあさんにあやまって、わたしはリュックを背負って家を出た。
校外学習に行かないって決めたのは、きのうの夜。
迷って迷って、「やっぱり行きたくない」って言ったら、朝一番に、おかあさんが学校に欠席の電話をしてくれた。
担任の先生は、わたしが来ないことを残念がったあと、
「よければ、保健室に勉強しに来てもいいですよ」
とお母さんに伝言した。
せっかくだから家でのんびりしてるつもりだったけど、先生からの伝言を聞いたら、病気でもないのにサボってることに罪悪感が湧いてきた。
校外学習には行かない。そう決めたのは自分なのに、家にいることが悪いことみたいに思えてきて……。結局、わたしは保健室にいくことにした。
自分の真面目さに呆れちゃうけど、一日中、家でソワソワしてるよりはマシだ。



