季節はずれの桜の下で




 その日の放課後。わたしは幼なじみのハルちゃん、こと、村沢 はるみと一緒に学校から帰った。

「そっかあ。校外学習の班、大和といっしょなんだね」

 今日のできごとを知って苦笑いを浮かべるハルちゃん。そんなハルちゃんの横で、わたしはスマホのメモアプリを開いてタタッと文字を打つ。

《大和くん、わたしのことを無理やり同じ班にいれたの。どーせ、心桜は同じ班になってくれる人いないんだから、って》

 スマホの画面を見せながら、むっと頬をふくらませると、ハルちゃんが笑った。

「はは。エラそーに言う大和の顔が目に浮かぶわ」

《ほんと、そう! やっぱり大和くんは、苦手》

「うーん。心桜からしたら、そうなっちゃうよね。でも、大和は大和なりに心桜のこと心配してるんだよ」

《そんなはずない》

 ハルちゃんに、わたしはスマホのメモに打った文章で返事する。

 わたしは人前でうまく話せないけど、紙に文字で書いたり、スマホのメモアプリを使えば、思っていることをスムーズに伝えられる。だから、ハルちゃんとの会話にはスマホが欠かせない。

 家が近くて幼稚園からずっといっしょのハルちゃんの前なら、ほんとうは少し声が出せるんだけど……。

 話す言葉や順番を考えていると、頭がこんがらがって固まってしまうことがあって……。

 だから、ハルちゃんにも、スマホのメモに文章を打って気持ちを理解してもらうことが多い。そのほうが、言葉よりも、思っていることを正確に伝えられる。