口に甘いは腹に毒


 カタン、と玉露くんが立つ気配がした。

 わたしの目にはまだ涙が浮かんでいて、滲んだ背景しか映らない。

 ぶつぶつ呟く声が近付いてくる。

 こっちに来てるの……?



「……苹果ちゃんは料理なんてできなくていいのにね。友達も必要ないよ。頼る相手も、笑いかけるのも、怒るのも、悲しむのも……僕だけにしてくれたら、」

「玉露、くん……?」

「してくれても……嬉しいのは僕だけだね」



 顎のラインを優しい手つきで撫でられた。

 下からすくうように、上を向かされる。



「僕と苹果ちゃんが一緒にいられる世界は、とっくになくなったんだよ」



 ──柔らかい感触がまぶたに降り注いだ。


 涙が消えた後。

 視界に捉えたのは、無機質な顔。