玉響の花雫    壱

私が告白したことなんてそれこそ
蓮見さんには関係ないし、筒井さんに
迷惑だけはかけたくない‥‥‥


『滉一が仕事中にあんなに素を出して
 突っかかってきたのが意外でさ。』


「そ、そうなんですね‥‥あ、コピー
 終わりましたので失礼します。」


早くここから逃げたい‥‥‥。
これ以上追求されるのも怖いから‥‥。


『残念‥‥親友だから分かるんだよね?
 長年見られなかった変化をさ?
 じゃ、残りの業務も頑張ってねー。』


「‥‥‥‥」


頭を撫でられると笑顔で
フロアの方へ行ってしまう蓮見さんを
ただただそこから動けず見送りながらも
本当に何もないのに‥‥と胸が苦しく
なるだけだった。




「コピーから戻りました‥‥」


『井崎さんありがとう。
 少し休憩してきていいよ。そうだな‥
 15分くらいで大丈夫?』


「大丈夫です。寧ろすみません。」


『頑張りすぎるともたないよ?
 甘いものでも飲んでおいで。
 また戻ったら次は17時までは
 ノンストップだからよろしく。』


古平さん‥‥


素直にお礼を伝えてから頭を下げると、
財布を持ってフロアに備え付けられて
いるリフレッシュスペースに向かった


色々あるけど‥‥カフェオレにしよう‥


こんな時間に休憩してる人なんて
いるはずもなくなんだか申し訳ない
気持ちにもなるけど、ここで一旦気持ちを整えて後半も頑張ろう



『お疲れ様‥‥休憩?』


ドクン


「お、お疲れ様です。古平さんに休憩を
 いただきました。」


席から立ちあがろうとすれば
それを手で制され、あろうことか
同じ丸テーブルの椅子に
筒井さんも腰掛けたのだ。


『総務課で頑張れそうか?』


もう話し方は私の知ってる
オフの時とは違うけど、
表情だけは穏やかで変わらない


「はい、頑張れます‥‥。古平さんも
 蓮見さんも話しやすいので‥‥その
 ‥‥ありがとうございます。」


『フッ‥困ったことがあったら、部署は
 違うけど、相談にはのれるから、
 いつでも言って欲しい。』


少し覗き込むような体制で私に近づいて
きたので、緊張して体が固まってしまう


この距離感は‥‥いいの?


「あ‥‥ありがとうございます。」


買ったカフェオレも飲めないほど
緊張していると、私の顔を見て
何故か嬉しそうに綺麗な顔が笑った