玉響の花雫    壱

筒井さんが真っ直ぐに私の方を見ているので、咄嗟に自分の手で頬に触れる

私‥顔色‥‥そんなに悪いの?‥‥

確かに泣いたりしてしまったから、目元が腫れて浮腫んでる気はしたけど、緊張し過ぎてるから?


『井崎さん』

「は、はい」

『どんな部署でも、体が資本だ。急な体調不良や怪我などは仕方ないとしても、倒れたり休むことで、負担は何倍にも増えてしまう。悩んだりツラい時は誰でも構わず相談して欲しい。昨日は俺にそれが出来たんじゃないのか?』

ドクン

筒井さんのことで泣いたいたなんてきっと思わないはず‥‥‥。

でも私情を優先して逃げたのは私で、それがなかったら昨日、部署のことを相談出来ていたかもしれない。


「‥ッ‥すみませ‥‥ご迷惑かと‥」

『迷惑か迷惑じゃないかはこちら側が決めることで、こういったことが、今後配属される部署で繰り返され仕事がストップする方が困る。何のためにここに先に入った先輩がいるのかを知ってもっと甘えて助けを求めればいい。』


逃げるなと言ってくれたのに、それを無視して逃げた自分を今になって恥ずかしく思う。

筒井さんはただ私の上司として心配してくれていただけなのに‥‥‥。


泣きそうになるのを堪えて口元に力を入れると
椅子から立ち上がって頭を下げた


「すみませんでした。
 次からは相談させていただきます。」


面談なのに筒井さんを怒らせてしまった。それだけでも悲しいけど、これが社会には必要なことだというのはよく伝わったのだ。


恐るおそるゆっくりと頭をあげると、視線の先に見えた筒井さんが、昨日のように優しく笑っていてまた胸が締め付けられる


前に進むって決めたのに進めてないのはきっと自分だけ‥‥


あの告白で気まずい思いをしたのは筒井さんの方なのに、他と差別なくこうして接してくださっている。それだけでありがたいと思わないと‥。


『面談は以上だ。上と相談をして部署は後で書面にて通達します。』


「はい‥ありがとうございました。」


もう一度丁寧にお辞儀をすると、部屋のドアに手をかけた時に、椅子から立ち上がる筒井さんに気づいてゆっくり振りかえりもう一度頭を下げた


『では次は犬塚さん、移動してください。』


小会議室に戻ると、さっきまでの重かった空気が嘘みたいに軽くペンが進むのは筒井さんのおかげかもしれない‥‥


どこの部署になるかわからないけど、どこでも自分なりに頑張ろう‥‥そう思えた。