流れ星みたいな恋だった

その夜、私は家に帰ると、早速、パソコンを立ち上げた。実際に、小説を書いてみようと思ったのだ。

 とはいえ、今までに一度たりとも自分で物語を考えた試しなんてない。ましてや、なにから書けばいいんだろう。

 やっぱり、まずはキャラ設定とかかな。

 数分間、パソコンの前でうなった後、私は画面に文字を打ちこんでいく。

 ちょっぴり変わり者の彼との、たった一晩限りの思い出。あの日の不思議な経験を、物語の題材にすることにした。

 執筆作業は思っていた何倍も難しかったし、膨大な時間がかかった。でも、それが楽しいと思えた。



 あの日、突然、ひょうひょうと現れた彼は私にとってたった一人のヒーローだった。

 きっとそれが彼に伝わることは、一生ないんだろうけれど、それでもせめて私の中に書きとめておきたかった。

 そうして約一か月くらいかけてできあがった私の恋愛小説。いかにも素人が書いたような拙い文章だったけれど、そこにありったけの想いをこめた。

『この広い世界の星空で、あの日、出会ったあなたを私は今でも探している』


 そんな最後の一文で結末を締めくくった時、私の目からは涙があふれていた。

 そこでやっと気が付いた。私は彼に恋をしていたのだと。それもたった一晩限りで終わってしまった、まるで流れ星みたいな一瞬の恋だった。

 あの時、言えばよかったな……私も好きだって。


 素直になれなかった幼い私の恋心。それはまたたく間に、パソコンのキーボードを涙の雨で濡らしてしまった。