残念すぎるイケメンが、今日も今日とて私を溺愛する。

「藍里さん」

「ん?なに?」


見上げると、真顔で私を見下ろしている西嶋と目が合った。


「いえ、何も」

「なにそれ」


見上げていた顔を元に戻して、無駄に長い廊下を西嶋と歩く。

私の歩幅に合わせて、私より前へ出ることは絶対にない。まあ、時と場合によるけど。


『いやぁ、今日も可愛いなぁ』

『なんでこんなにも可愛いのか』

『記念撮影しません?可愛い記念日』

『あ、それだと毎日が“可愛い記念日”になりますね』


などなど、隣から雑音が聞こえてくるけど、完全にスルーを決めている。


『可愛い』……ね。そりゃそうでしょ。組長の孫だし、10年も一緒にいたら妹みたいで可愛いでしょうね。


・・・・そんな『可愛い』なんて言葉、私にはいらない。


もうお察しというか、大概こういうのってこういうパターンがセオリーな気がするけど、私の初恋相手は西嶋。

で、今現在の想い人も西嶋……なんだけど、あんな残念すぎる男を“好き”という現実が、どうしても受け止めきれなくて、私のプライドが許さなくて、できることなら西嶋のことを“好き”……なんてことは無かったことにしたくて、葛藤し続けること早10年。

笑えない、10年とか笑えないって。10年無駄にしてるとか、時間の無駄使いとかのレベルじゃない。