残念すぎるイケメンが、今日も今日とて私を溺愛する。

ニヤニヤしている大男を引きずって、廊下へポイ捨てした。


「……はぁぁ。人の気も知らないで」


無の境地で制服に着替えて部屋から出ると、当たり前かのように私を待っていたのは、残念すぎるイケメン。


「ささ、いつも通り『あーん』し合いながら朝食をっ……」

「誤解が生まれるようなこと言わないで」

「少しくらい見栄を張らせてくださいよ~」

「どんな見栄の張り方だよ」


この残念すぎるイケメンは、西嶋 楓(にしじま かえで)。

私が8歳の時に小柳組へやって来た西嶋は、銀髪で両耳はピアスだらけのド派手な男だった。

今は随分と落ち着いて黒髪だし、ピアスも全くしなくなったけど。


・・・・私はどっちの西嶋でもいい。派手でも大人しめでも、私を一番大切にしてくれていることは伝わってくるし、それは昔も今も変わらない。だから、見た目なんてどうでもいい。


まあ、ぶっちゃけ過剰すぎるっていうか、過保護すぎるっていうか、妹?娘?みたいな感じで溺愛してくるのはかなりネックだけど。

ていうか、どう考えても私のことは恋愛対象として、女として見れないでしょ、西嶋は。



西嶋にとって所詮私は────“組長の孫”でしかないんだから。