「行こう、二人きりになれる場所」
微笑まれたと同時、宙を浮いた私の体。
突然のお姫様抱っこにドキドキする余裕なんて、すでに残っていない。
意識がもうろうとする。
「はぁはぁ」と肩で呼吸することで精いっぱい。
唯都様の腕の中が、暖かくて、息苦しくて、心地いい。
このままずっと甘い鎖で縛られていたい。
唯都様のことが大好きだから、私はどうなっても……
唯都様は、闇夜に染まる地面を一歩一歩踏みしめている。
まるで宝物を扱うかのように、私の体を大切に抱えてくれているのがわかって。
揺れが心地いい。
夢の中にいるみたい。
「車のキーをちょうだい」
唯都様が足を止めたのは、おさな顔の独璃くんの前。
「唯くん、僕たちをここにおいて二人で消えるつもりでしょ」
不満げな高めの声に
「正解」
唯都様は声をスキップさせ、今度は尊厳くんの方に体を向けた。



