うつむく私に視界に映りこんだ、男物の靴。
「ね、わかったでしょ?」
鼓膜を溶かしそうなほどトロトロに甘い艶やかな声に、体中の細胞が熱を持った。
私はまだ、顔を上げてはいない。
大好きな人を瞳に映してはいない。
にも関わらず、すでにハートが苦しい。
心臓が肌にぶつかるように跳びはねだして。
荒ぶる呼吸。
「はぁはぁ」と必死に酸素を取り込もうしているのに、過呼吸のように肩が震えてしまう。
「琉乃ちゃんは飼育型オメガ。アルファに可愛がられたら発情する希少種。でも、その中でも特殊みたいだね。だって琉乃ちゃんは、俺にしか発情しないんだから」
フフフと嬉しそうな吐息が続いて、その甘さに私の心臓がオーバーに跳ねた。



