唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 私が唯都様の背中に腕を回した瞬間

 【俺はあまねが大好きだ】と唯都様は再認識して、私を拒絶したくなっちゃったのかも。



 でもしょうがない。

 唯都様は野外ライブで私を見つけた瞬間、私を好きになったわけじゃないし。

 あまねさんに似た私を、好きだと思い込んでしまっていただけ。

 私を運命の番だと勘違いしてしまっただけ。



 唯都様に出会っていなかったら、テレビ画面越しで見るだけのファンのままだったら、心がトラックにひかれたようなこんな激痛を味あわずに済んだのかな。

 


 
 「忘れ……ます……」


  唯都様のこと……



 後ろ髪ひかれる思いを、月夜に溶かす。



  忘れたくないけれど……


 「なんとか……善処します……」



 自信なさげに声をこぼし、目線を暗い足元に逃がす。