唯都くんは『運命の番』を溺愛したい




 「今、誰のことを考えているの?」



 
 突然降ってきた、甘くて、切なげで、切羽詰まったような声。

 唯都様の胸の内がわからない。



 戸惑い震え、恐る恐る顔を上げる。

 私だけをまっすぐ見つめる苦しそうな瞳と、視線が絡んだ。




 「瞳に映さないで」



  えっ、なにをですか?



 「琉乃ちゃんの記憶からも抹消して、全部、今すぐに」



 言葉の意味が理解できない。

 私はポニーテールを揺らしながら、首をかしげることしかできなくて。

 目を泳がせながら、パニック状態の脳で一生懸命考える。




 今のって……



 【俺のことは忘れて】

 【出会った日から今までのことを、まるごと全部】

 

 そういう意味なんだろうな。

 やっぱり嫌われちゃったんだ、私。