静寂な闇夜、見事に輝く満月に照らされた私たち。

 お互い何も話さない。

 言葉なんて生まれない。

 でもすごく伝わってくる。

 力がこもった唯都様の腕から。

 私を助けることができて本当に良かったという思いが。



 私も同じ思いです。

 唯都様があの男に傷つけられなくて、売り飛ばされなくて本当に良かったです。



 伝えたい。

 自分の恋心を表現したい。

 私の想いが届いてほしい。

 

 欲が湧き、体中の勇気をふりしぼる。

 覚悟を決め、手のひらを唯都様の背中に押し当てたときだった。

 私の肩を両手で押しながら、唯都様が私から距離を取ったのは。




 ……あっ。




 鼻がしらがツンとうずく。



 ……拒絶されちゃったんだ、私。



 かき集めた勇気が凍りつき、涙腺に刺さり、涙が出そうになる。