でも男は余裕の笑み。
アハハと笑いながら立ち上がり、瞬時に理亜ちゃんの背後へ。
「これだから世間を知らないお嬢様は」
捨て台詞と一緒にジジジという聞きいたことがあるような低音が不快に湧き、私の聴覚が音の出どころを必死に探す。
「ちょっとなにこれ、手が離れないんだけど! 親指が痛いじゃないの!」
「本当は憎いその口を縛りたかったけどな。針と糸がないからしょがない。代わりに腕を後ろに回した状態で、親指同士を縛っといたから」
「結束バンドを使ったのね、全然切れないじゃない、何とかしなさいよ!」
「このチャペルにはハサミなんてものはない。手で切る? 男の俺でも不可能だな。ってことで、お迎えが来るまで、窓の外の真っ暗な海でも見ながら待ってろ」
「お迎えって?」と、青ざめた理亜ちゃんがチャペルの入り口に目をむけた。
「俺と共犯だったキミも、地獄行きってことだ。俺は海外に高飛びするから天国に住むけど」



