理亜ちゃんは抵抗を諦めたらしい。
「……騙されていた? ……私が」
しばらく固まり、震え、床に突っ伏すと
「ウソよ……そんなはずは……」
床を殴りながら大泣き始めてしまった。
私は縛られた状態で床に座ったまま、男の顔面パーツを一つ一つ瞳に映していく。
「まさか……」
絶望の吐息がもれたのは、顔から血の気が引いた後だった。
この中年の男だ、間違いない。
コンサートの帰り、私の口元に薬品入りのハンカチを押し当てたのは。
待って待って。
このえびす顔、どこかで見たことがある。
線のように目が細くて。
高級なものを食べてますと言わんばかりにふくよかで。
笑顔の時は、手を合わせて拝みたくなるような慈悲深い表情で。
鼻の横に、シャツのボタンほどの大き目なほくろが……って。



