「この女の価値は首。金持ちアルファが見定めるのは首。それなのにこのアザ、どうしてくれるんだよ」
男の怒りの視線の先は、まだ立ち上がれない理亜ちゃんへ。
痛い痛いと絶えない悲鳴。
男は脂肪で体が大きいぶん、ひと蹴りのパワーも並外れているのかもれしない。
未知の恐怖が私を襲う。
理亜ちゃんはうつぶせのまま肘から下を床にあて、少しだけ上体を浮かせた。
「私を蹴り飛ばすなんてひどいじゃない!」
「は?」
「双子の妹をこの国から追い出してくれるって言うから、私はあなたの話しにのったのに。私にまでこんな仕打ち…… 痛い! 信じられない! ほんと許せない! 体に傷が残ったらどうしてくれんのよ!」
「うるせーな! 黙れ! 騙されていたことにも気づかない性格ブスが!」
鼓膜に痛みを感じるほどの怒鳴り声だった。
え?と、理亜ちゃんの目と口がこれでもかというほど開いて。
息をするのも忘れ、二人を交互に見つめてしまう私。
怒号が幻想的なステンドグラスに吸い込まれていき、不気味な静けさがよどんでいる。



