胸を締めつけるシートベルトを引っ張るように身を乗り出すも、我流の心にはなにも刺さっていない。
彼は眠そうにあくびをこぼすだけ。
めんどくさそうな表情を見て、怒りのマグマがはぜる。
「運命の番は寄り添うことで、死ぬまで幸せでいられる!」
「耳の近くですごむな」
「俺たちは強くて深い絆で結ばれているんだ!」
「鼓膜がうるせーって逃げ出すだろう―が」
「俺には琉乃ちゃんしかいないし、琉乃ちゃんも俺を必要としてくれている!」
「じゃあ聞くが、お前らが運命の番同士だっていう証拠は?」
証拠……?
と……言われても……
「ないわけ?」
「っ、あるある! 俺は琉乃ちゃんのフェロモンしか嗅ぎとれたことがない!」
「またそれ? 俺はあの女をベータだと確信してるけどな」



