唯都くんは『運命の番』を溺愛したい


 自信が消え、歯を食い込ませた下唇に痛みが走る。

 黙りこんだ俺を見ようはせず、我流は落ち着いた声を車外の景色に溶け込ませた。



 「巨額な金に見合う恩なんて、あの女に返せるはずがないわな」

 
 「何も返さなくていい……喜んでくれればそれでいい……」



 本心だ、俺は見返りなんて求めていない。



 「ただ喜んでくれればいいって、それなんだよ。キャパ以上のことを期待されたと思い込まされる残酷さ、完璧腹黒王子にはわかんねーか」


 「あの女あの女って、我流は琉乃ちゃんのことを知らないでしょ? それなのに……」


 「ポニーテール揺らしながら無駄に笑ってるベータ女のことなんて、知らないし別に知ろうとも思わない。だがな勝手に想像はできる。唯都、お前が言ったんだよ。あの女とアマネが同類だって」