「じゃあ我流は、琉乃ちゃんが家のために売られれば良かったって思ってるの?」



 琉乃ちゃんはずっと、家族に虐げられてきたんだよ。



 家じゅうの仕事をやらされ

 寝るときは狭い物置きで

 総長の話だと、家族から日常的に暴力を振るわれていたって。



 助けたい。

 苦しみから解放してあげたい。

 長い間心も体も痛めつけられてきた琉乃ちゃんに、幸せになって欲しい。

 いや、俺が幸せにしたい。



 「俺のこの優しさのどこが呪いなの? 愛でしょ! 俺は自分の命を捨てられるくらい琉乃ちゃんを大事に思ってる!」



 荒々しい声が出た。

 怒りの爆発が抑えきれなかった。



 余裕な笑みをこぼしながら我流をいじめるのが日常茶飯事の俺の怒号に、違和感を感じたんだろう。

 ハンドルを握るマネージャーが、バックミラー越しに俺をちらり。

 いつもの幼なじみ喧嘩かとため息をはき、視線を前方に戻している。

 俺たちの口論を子守歌代わりに眠ることができる尊厳と独璃は、いまだ爆睡中だ。