「俺はお前と違う! オメガが目の前にいたら、微量のフェロモンを嗅ぎとれる!」


 「琉乃ちゃんは俺の運命の番なの! 俺だけにしかわからないフェロモンを放ってくれているんだよ!」


 「唯都さ、あのベータ女をオメガって思い込みたい理由、なんかあるわけ?」


 「だから琉乃ちゃんは……」


 「本当にわかってねーのな」


 「なんのこと?」


 「あの女を追い詰めてるの、間違いなくお前だよ!」



 我流の真剣な目にゾッとした。

 まっすぐ俺を貫いてくるから、のどが絞まって声が出ない。

 俺の中にくすぶっていた不安が、浮かびあがってきたせいなのかもしれない。



 「借金の肩代わりなんかされたら、お前の存在は呪いでしかなくなるぞ」



 呪い? 

 意味がわからない。

 こんなに琉乃ちゃんを愛しているこの俺が、忌み嫌われる対象になるっていうの?



 怒りがこみあげてきた。

 我流を殴りたくてうずく拳を暴走させないように、胸を締め付けるシートベルトをきつく握りしめる。