天禰(あまね)のお墓に向かう車の中、3列シートの一番後ろに座る俺の横で我流が長い足を組んだ。

 前の列のヒトリと尊厳は、車の揺れが心地いいんだろう。

 コンサート後の疲れもあってか夢の中。


 我流も寝ればいいのにと思ったところに飛んできたこの変化球に、俺の眉が下がる。

 「俺と琉乃ちゃんは恋人関係なの。同等じゃないはずがない」ととぼけてみたけれど、うまく笑顔が作れない。



 原因はわかっている。

 琉乃ちゃんの泣き顔が、頭から離れないからだ。

 気を抜くと顔面に張り付けてある余裕が、簡単に剥がれ落ちてしまいそうになる。

 我流が隣のシートから、冷やかな目を向けてきた。



 「あの女、お前のこと様づけだしさ」


 「あの女じゃない。琉乃ちゃん!……って。はぁぁぁ、我流に呼んでほしくないか。やっぱり神楽(かぐら)さんって呼んで」


 「何そのうざい命令。かぐらって言いにくいわ。俺の口を腐らせる魂胆かよ」


 「永久にしゃべれないように、口を縫い付けようか?」