我流くんに腕を引っ張られる唯都様。
「……あ」
何かを思い出したよう天井を見上げた瞬間、私に絡んでいた腕がほどけてくれた。
ドキドキを鎮めるチャンスとばかりに、唯都様から距離を取る。
急に唯都様の表情が、陽だまり色をまといだした。
愛おしい人の名が、耳に届いたからなんだろうな。
「唯都急げ、ヒトリも尊厳も楽屋で待ってる」
「そうだったね、今から天禰のところ行ってコンサートの報告会をするんだったね」
「コンサート終わったら秒で来い!って、天国のアマネにしばかれるぞ」
「人を笑顔にすることを生きがいにしていた天禰だからね、ガルルみたいに人を傷つけたりなんかしないよ」
「だから、ガルル言うな!」
「アハハ」
唯都様は目じりも頬も緩んでいて。
こぼす吐息までも優しさで満ちあふれていて。
――本当に深く愛しているんだな、あまねさんのこと。
心の闇から湧きあがる敗北感が、私の胃をギューッと握りつぶしてくる。
あまねさんに嫉妬してしまう自分が、嫌で嫌でたまらない。



