「琉乃ちゃん、俺から離れないで」
「あっ……はい」
騎士のような低くて重い声を放った唯都様は、長い足で床に落ちている日本刀を蹴り上げた。
宙を回転しながら綺麗な弧を描く刀が、寸分狂わず唯都様の手に収まる。
そして暗がりにいるであろう見えない敵に、剣先が向けた。
「宣戦布告なら受けて立つ」
本当に誰かいるの?
疑ってしまうほど、10メートルほど離れたステージ袖はもの静かだ。
相手はスナイパーだったりして。
もしかしたら暗殺者?
人気アイドルを妬むアンチ集団だったらどうしよう……
唯都様はこの世の宝。
世界中にいるファンの希望の光。
家族に虐げられてきた私は、何度唯都様の歌に心を救ってもらったことだろう。
唯都様がいなかったら、二度と帰れぬ闇に身投げしていたかもしれない。
恩を返すためにも、私が唯都様を守らなきゃ!



