唯都様の唇が私の肌から浮上するものの、甘い気配はさらに唇に近づいているのがわかる。
私の唇に触れてくれそう……
今度こそキスをしてくれそう……
目をつぶったまま、甘さを受け入れる覚悟を決めた時だった。
私の足が勢いよく宙を浮いたのは。
私に絡んでいた彼の腕の位置が、荒々しく変わる。
寄りかかっていた椅子の背をいきなり倒された時のような、勢いづいた背中の傾き。
体がオーバーに揺れたと思ったら、瞳に映る天井の風景が流れていく。
戸惑う暇さえ与えてもらえない。
私の斜め上を、弾丸のようなものが通り過ぎて。
目で追うことも、物体の形状を捉えることもできない速さで。
後ろの方で床を跳ね転がる音が耳に飛び込んできたのち、ようやく現実を理解することができた。
私を抱きかかえた唯都様が、後方にジャンプをしたんだと。



