「このままじゃ俺、琉乃ちゃんが泣き叫ぶようなことしちゃいそうだから、早く」
「えっと、逃げてと言われても……」
私の体は自由がきかない。
両手は相変わらず、背後から唯都様に捕まっている。
私の頭上にはまだ、日本刀が振り上げられたままで。
この状況を伝える、責めにならない言い回しは……
脳をねじってふわふわ言葉を引き出していると、鋭い音が鼓膜をはじいた。
――カラン、カラカラン
音につられて視線を落とす。
足元で揺れ止まったのは、艶びかりしている立派な日本刀。
私の手から落ちたんだと、ようやく理解が追いついた。
もう私の手の甲に唯都様のぬくもりはない。
手だけは解放されたんだ。
とりあえず距離を取るのが得策だよね。



