「春雨くんって、彼女、いるの?」
隣に腰掛けてきたマドカさんは、優しい口調で聞いてきた。いるのか、といえば、嘘になるのか。
俺が戸惑っていると、続け様に言った。
「このあと、雑誌のインタビューだって。ごめんね、私、計画性ないから」
計画性という言葉に仕事の生き様を感じた。マドカさんという人物は自分では制御出来ないこの不自由さを抱えているであろう芸能界に、【計画性】を感じているのかと思うと、何故だかとても親身になってしまった。
「いえ、とんでもないです。彼女…ですか。ボク、好きな人はいるんです」
すると、ぱあっという文字がそのまま出た様な顔でマドカさんが「わかるよ」と頷くと共に手を握り締めてきた。



