満天の君と、純白のヒメゴトを。

「お怪我はありませんか繭菜さん」
「いえ私は、樹々瀬くんこそっ」
「はい大丈夫で…ん。名前」
「名前?」
「今…俺の名前…」

礼儀正しい敬語の中に時折見え隠れする幼い雰囲気に疑問を抱きつつ口を開く。

「樹々瀬くんのこと、知ってるので」

あれだけ目立ってれば誰でも…。
待って。不審者扱いされてたらどうしよう。

しかし、私の不安とは裏腹に、目に映るのは「そっか…」と耳先を桃色に染める姿だった。
何かを隠すかのように掌で覆われた口元が仄かに緩んでいる気がしなくもない。

ん?というか名前と言えば、彼が私の名前を認識している方が変じゃ?

続々と追加される謎に首を傾げる。その間に樹々瀬くんは我に返ったようで、一礼すると足早に階段を駆けていく。

「え…逃げられた………?」

結局、その日は委員長の仕事どころではなかった。

翌日の放課後、持ち越した仕事を片付けようと急いで帰り支度をし各クラスを練り歩いていく。その甲斐あり、残すは生徒会分だけになった。

生徒会役員と言えば泉くん。見知らぬ人との対面続きで気疲れしていたから、会えるのが純粋に嬉しい。

穏やかな心持ちで生徒会室の扉に手をかける。

「だーかーらぁーっ何回言ったらわかるんだよっ!」

ノブを引こうとしたまさにその時、室内で怒号が飛ぶ。