満天の君と、純白のヒメゴトを。

華やかさに欠ける出で立ち、特徴が乏しい顔立ち。器量も容量も、全スペックが凡人の中の凡人。

仮に惚れたとしても私なんかが相手にされるわけがない。あんな、生まれた時から白馬も玉座も持ち合わせているような人に。

身分差恋愛?そんなの創作の中だけ。

だからやっぱり、’’ただのイケメン’’。

これまでもこれからも未来永劫関わりのない物。’’ただ’’遠くから眺めるだけ、’’ただ’’偶然同じ学校にいるだけ。これ以上交わることは絶対にない。恋するなんてもってのほか。断言できる。

きっと、目が合ったのが史上最大の接点。

その事実すら身に余る。

どこか浮ついた雑念を抹消しようと目の前の階段を駆け上がる私は、気付けなかった。前方から人が降りてきているということに。

あ、と思ったときには、顔面に大きな影が落ちていた。

とっさに躱すことも出来ず面した胸に顔からダイブする…かと思えば、急な衝撃に耐えきれず足が段差から滑り落ちる。

このままだと背中から踊り場に叩きつけられる…!もう不可抗力だと諦めた私は力一杯瞼を閉じる。

「危ない!」

しかし、背中に伝わってきたのは力強い感触だった。

恐る恐る瞼を開けると、ありえないほどに美しいご尊顔が目と鼻の先にあった。

それはそれはもう、毛穴の一つ一つが見えてしまいそうなほどに。まあこんなにきめ細やかな肌に毛穴なんか存在するわけがないんだけど…って、

え?

数周回って冷静になっていた私はあまりの非現実的な状況に目眩を覚える。

なんで樹々瀬くんが!?というかこの体勢…。