満天の君と、純白のヒメゴトを。

「正直、今までは物語の展開に納得できなかった。魔法で変身した姿に恋しただけ。ありのままなんて見えなくていい、そんな空虚な恋は嫌だなって。
けど、初めてわかったんだ。王子様がシンデレラを見つけたときの気持ち。側から見たら宝石箱みたいで、でも本当は黒ずんだ世界を一気に塗り替えてくれるような…」

膝を崩し前屈みになる樹々瀬くんの淡い眼差しが、舞台上で、私の瞳と同じ高さで交わる。

「光なんだ」

瞬間、曇天の空を割り、一筋の明かりが窓から差し込む。
煌めきの粒は燦々と二つの影に降り注ぐ。

「ひとみちゃんはずっと俺のお姫様。俺の特別。それだけじゃ側に居てくれる、大した理由にはなりませんか?」

…あぁもう。

私はヒロインになれない。お姫様にはなれない。そう思って生きてきたのにーー心に刺さる棘が、すうっと溶けていく。

「側に居てほしい、じゃない。側に居たいんだ」

気付かぬうちに力の抜けていた指先が、彼の方へと手繰り寄せられる。

「これが、嘘を吐いて演じて誤魔化して…そんなのばかりの高校生活で初めてさらけ出せた俺の本当」

彼の青空みたいな瞳が、あまりにも綺麗で…。

「もう、いいかなあ?」

私も素直になってもいいのかな。

これ以上我慢なんてできそうもなかった。

「私は何も持ってない。胸を張って好きだと言えるものも特に秀でている所も、何も。身も心もみんなみたいに可愛くない。全部理解してたから怖気づいたの。私なんかが、特別な人の側に居るべきじゃないって」
「…うん」
「でも本当はずっと嬉しかったの…!樹々瀬くんが笑ってくれて、私のことを知りたいと思ってくれて。他愛もないことを話す時間が凄く大切で、愛おしくて、だから」

自分の心に正直になるーーその先にあるものは何か。

ありのままを望んだあの日、とっくに答えは出ていたんだ。