満天の君と、純白のヒメゴトを。

そのうちに生徒集会が幕を開け、満を辞して樹々瀬くんが登壇する。

どうやら樹々瀬くん務める総務は、こういった催し物の際に司会進行に任命されがちらしい。今も一人、壇上でマイクを握っている。内容は校内の風紀、通学マナーの再確認など事務連絡ばかりだけど、みんなうっとりと聞き入っている。

壇上…まさに雲の上の存在と、地面にしゃがみ込むだけの私。

本当はずっと、この距離だった。

この世に一つしかない月に手を触れようなんて、そんな烏滸がましいこと思わない。思えない。

玉座に上るお姫様になんて、どれだけ背伸びしても届きようがない。

だからこの距離感が私たちの正解なんだ。

舞台の上のヒーローと、大勢の観客の一人。

あの出会いが偶然か運命かなんて問うまでもない。

私は遅かれ早かれ、目を覚まさなければならなかったのだから。

「本日の生徒集会はこれで終わります。扉に近いクラスから順に退場して下さい」

集会も幕を閉じ、恍惚としたままの生徒たちがまばらに退却していく。

両隣から粗方生徒が退出した頃、私も例に倣って腰を上げる。と、突然前方から副会長らしき先輩の声がマイクを通して飛んでくる。

「すみません。館内残っている方たちで手近な場所の窓閉めに協力いただけますか」

手近な場所…ではないけれど、舞台の近くの窓がまだ空いている。

出口とは真逆に一人突き進む。足元の機材に気を付け大窓に触れる…その瞬間。

舞台袖の厚い幕から、一本伸びた綺麗な腕が私の手首を掴み取る。