満天の君と、純白のヒメゴトを。

★★★

「あーやっとテスト終わったぁ」
「ね、この後カラオケ行こーよ」
「悪ぃ、俺今日から部活」

試験最終科目の終了と共に、一週間ぶりに戻ったざわめきは教室から溢れ出す。
その喧騒を掻い潜るように生徒集会のために体育館へ誘導する放送が繰り返される。

大半の学校では『生徒集会』は、面倒臭い・暑い・長いと、負の面三拍子が勢揃いする催しだが、樹々瀬くんというアイドルが生徒会に所属する我が校では寧ろご褒美イベントと化す。

通りすがりでしかお目にかかれない姿と、物静かなせいで滅多に耳にできない声。

一挙両得できる機会なんてそれこそ集会の時ぐらいらしい。

そのため放送がかかった途端、話に花を咲かせていた女子たちは一変、我先にと教室からの脱出を図る。

猛烈な熱狂を見送り、私は桃とのんびり体育館に向かう。分厚い雲に覆われた空の下、靴を履き替える準備をしていると、何処からともなくスイートローズがふわっと薫り立つ。

計算された甘美さが胸を焼く。

香りの先に佇む、試験日でも抜かりのない身だしなみの宮美さんは、目敏く私を捕えた途端笑みを僅かに強張らせる。

全てが申し訳ない。

居た堪れなさが焦げ付いたまま、私は逃げるように整列する。

2年9組、出席番号は後ろの方。
全体で見れば、真ん中から少し横と後ろに逸れる、絶妙に目立たない位置。

大勢の中に埋もれている。これが私。