満天の君と、純白のヒメゴトを。

「本当は知ってるよ、テストのことで悩んでるんじゃないことぐらい」
「別にいつも通りだよ」
「見え見えの嘘つくなっての。素直だから全部顔に出んだよ」
「”素直”…」

そういえば桃もよく口にする。ことあるごとに、私が素直だって。

でも…

「素直って、なんなんだろうね」

素直さなんて、遥か昔に置いてきたつもりでいた。
お姫様に憧れていた、自分だってヒロインになれると信じて疑わなかった、あの頃の落とし物。

「素直っていうのはもっとこう…純真でひたむきな形をしてるものじゃないの。私なんかには、まるで似合わない」

可愛げなんて皆無。その自覚は大いにある。

「出た”私なんか”。俺は一年分の繭菜しか知らないけど、考えるに元々はそうだったんだろ?純粋で前向きな女の子」
「…どうして?」
「当時と在り方としては別物なんだろうけど本質は同じ、みたいな」

泉くんは背もたれに体重を預け直すと、愉快げなまなじりを僅かに緩める。

「例えば…良くも悪くも周りが見えすぎるところ。だから多分、他人の感情、特に負の感情に敏感で。気付いてしまった以上それを蔑ろにすることもできない。感じ取った情報を噛み砕く間もないまま全部素直に吸収する」

普段の気楽な雰囲気とは打って変わった冷静な分析に、思わずドキリとする。

妙に鋭い観察眼と勘は、稀に当事者でさえ有耶無耶にしていたことをズバリと言い当ててしまう。

「言うなれば、ネガティブ素直。素直に卑屈」

歯に衣着せぬ断言に、私は遂に宙を仰ぐ。陽光が沁みる視界の隅でふわふわ跳ねる金髪が、ふとリズムを崩す。

「…でもごく偶に、本当にただただ真っ直ぐに素直になるときがある。無意識なんだろうけど」