満天の君と、純白のヒメゴトを。

美しい。見ていたい。痛い。

唇を噛み締めていると、人気のなかったはずの廊下に焦ったように駆け行く足音が響く。授業がじきに始まる事実に、私たちは慌てて別れを告げ背中合わせに歩き出す。

段々小走りになる中、窓の外で揺らめく数個の影がやけに主張をしてくる。そんな場合じゃないのに、体育館へと伸びる渡り廊下を眺め…見慣れた背格好を見つける。

「泉くん…?」

体操服に身を包み、生徒会役員にあるまじき速度で廊下を疾走しているのは、紛れもなく泉くんだった。

『太陽のクラスも日本史だって』

先程の樹々瀬くんの言葉が脳内再生される。同時に言葉に付随したたどたどしさが今になって引っ掛かる。

いや、いくら賢くたって勘違いするときもある。そうだよ。

無性にそう結論づけたくて。だから胸に刺さる棘は、見て見ぬふりをした。

でも私がいくら必死に目を逸らしたって仕方がない。

いつだって彼を見つめてきた、揺るぎない視線がある限りは。