「樹々瀬くん!どうして…もう授業始まるよ」
「それは俺のセリフ。何でここにひとみちゃんがいるの?」
「何でって私は教室の戸締りに」
「ん?だって俺、太陽に教科書を借りに来て…あっ」
「泉くんのクラス、一個上の階だね」
「あはは、間違えちゃった」
やっぱり絶妙に天然だ。
苦笑いする私の傍ら無邪気に頬を掻く樹々瀬くんは、ふと何かに気付いたように端正な瞳でこちらを見つめる。
「ひとみちゃんのクラス、次の授業って」
「地学だよ」
「じゃあ!もしよかったら日本史の教科書貸して下さいっ」
「泉くんに借りに行くんじゃなかったの?」
「あー…っと。そういえば太陽のクラスも次日本史だったなって、思い出して?」
若干のぎこちなさは感じるものの納得した私は、急いで鞄から取り出した教科書を手渡す。
「ありがとう。こんなこと頼める人他にいないから」
そう微笑み部屋を後にする背中に、ぽつりと口を動かす。
「…無欠の優等生も忘れ物ぐらいするよ」
徹底的に完璧を演じようとする、その姿が少し寂しかった。
樹々瀬くんは静かに振り返ると、行き場のない視線を足元に投げるいじけた頭をそっと撫でる。
「ひとみちゃんは優しいね。優しくて可愛くて…綺麗だ」
「またそんな冗談」
「冗談じゃないよ。すっごく綺麗」
疑義をこめた目線を上げると、明かりの消えた室内と昼下がりの廊下の狭間で穏やかな笑顔が一つ、密やかに実っていた。
何かを慈しむような愛おしむような瞬きに、堪らなく惹きよせられる。そう自覚するとともに、ささくれ立った心に爪が立てられる。
「それは俺のセリフ。何でここにひとみちゃんがいるの?」
「何でって私は教室の戸締りに」
「ん?だって俺、太陽に教科書を借りに来て…あっ」
「泉くんのクラス、一個上の階だね」
「あはは、間違えちゃった」
やっぱり絶妙に天然だ。
苦笑いする私の傍ら無邪気に頬を掻く樹々瀬くんは、ふと何かに気付いたように端正な瞳でこちらを見つめる。
「ひとみちゃんのクラス、次の授業って」
「地学だよ」
「じゃあ!もしよかったら日本史の教科書貸して下さいっ」
「泉くんに借りに行くんじゃなかったの?」
「あー…っと。そういえば太陽のクラスも次日本史だったなって、思い出して?」
若干のぎこちなさは感じるものの納得した私は、急いで鞄から取り出した教科書を手渡す。
「ありがとう。こんなこと頼める人他にいないから」
そう微笑み部屋を後にする背中に、ぽつりと口を動かす。
「…無欠の優等生も忘れ物ぐらいするよ」
徹底的に完璧を演じようとする、その姿が少し寂しかった。
樹々瀬くんは静かに振り返ると、行き場のない視線を足元に投げるいじけた頭をそっと撫でる。
「ひとみちゃんは優しいね。優しくて可愛くて…綺麗だ」
「またそんな冗談」
「冗談じゃないよ。すっごく綺麗」
疑義をこめた目線を上げると、明かりの消えた室内と昼下がりの廊下の狭間で穏やかな笑顔が一つ、密やかに実っていた。
何かを慈しむような愛おしむような瞬きに、堪らなく惹きよせられる。そう自覚するとともに、ささくれ立った心に爪が立てられる。



