満天の君と、純白のヒメゴトを。

「次、地学じゃん。課題間に合った?」
「何とか。追い込まれるまで火がつかないこの性格、本格的に治したい」
「とかいってテスト勉強も進んでないと」
「桃、そろそろ探偵にでもなったら?応援する」
「てかあんた日直でしょ。鍵締めは」
「あ!忘れてた…授業間に合うかな」
「早速追い込まれてんね」

地学実験室への道中、桃に荷物を預け足早に教室に戻る。宮美さんとの邂逅から数日、上の空な瞬間が増えた気がする。

クラスメイトの流れを一人逆走し、黒板の側面にかけられた鍵を手に取る。

…一捻りで開けたり閉めたりできる鍵みたいに、私の感情も自在に扱えたらいいのに。

脈絡なく湧いてきた独り言を拭うように、建付けの悪いドアを全身で引いていると。

「あれ?ひとみちゃん」

私をそう呼ぶのは一人しかいない。

「きっ」

羞恥心と驚愕から大声が出そうになる私の口を、樹々瀬くんはそっと人差し指で封じる。

中に誰もいないことを確認すると、そのまま私の手を引きドアの内側に身を隠す。

同時に引き締まった冷涼さが解け、柔和な眼差しが両目に宿る。