満天の君と、純白のヒメゴトを。

私なんかが近くに立つと、宮美さんの常軌を逸した可憐さが際立ってしまう。髪の毛一本一本が美少女の化身。その上気配りもできるだなんて、虜にならないわけがない。

そんな宮美さんの黒目がちな瞳は、私の机上で静止する。

桜色のジェルネイルが咲く指先がなぞるのはプリント右上の「繭菜ひとみ」という名前。

「まゆなひとみちゃん…苗字が繭菜なの?」
「そうです。名前みたいな苗字だ、ってよく」
「ふふっ。なーんだそうだったんだぁ」

途端、宮美さんは色香を感じさせる表情を崩すと、満面の笑みで何度も頷く。

「あーよかった。安心した」
「あの。私めの名前が何かご迷惑を?」
「えへへ、ごめんね?こっちの話。この間樹々瀬くんに文化祭の申請書誰に出したらいいか聞いたら、9組の繭菜さんだって言われて。え?名前呼び?ってずっと引っかかってたから」
「あ、あはは…」

言えない。彼が私を下の名前で呼んでいるだなんて口が裂けても言えない。

頬が引きつるのに合わせて、胸がチクリと痛む。

「勝手に勘違いしてやきもち妬いて、ほんと恥ずかしい…まだ彼女じゃないのに」
「まだ」
「でもねでもね、樹々瀬くんって冷たいように見えてほんっとに優しいの!あ、わたしは樹々瀬くんのことが大好きなんだけど…って知ってるよね。この間もね〜」

樹々瀬くんの話題になった途端、宮美さんの語気に熱が籠る。くるくると表情や仕草を変える様は、一見初心な乙女のようでいて、随所随所から強かさが滲む。

宮美さんの中では、樹々瀬くんの側で笑っている未来予想図が完成しているんだろうな。

けれど決して荒唐無稽さは感じさせない。かえって相応の説得力がある。

「あ。急にこんな話、びっくりさせちゃったよね。よく友達にも言われるの。恋話になると周りが見えなくなるって」
「びっくりというか圧倒されちゃいました」
「本当!それは嬉しいなあ」
「うれしい?」