満天の君と、純白のヒメゴトを。

珍しく上向きな心持ちのおかげか、苦手な数学の授業も聴く睡眠剤と名を馳せる物理の授業も、ちっとも苦にならなかった。

「ひとみ、急に機嫌良くなってるじゃん」
「今は光墜ちひとみちゃんですので」
「意味不明ついでに面白い話して」
「無茶振りだなあ…歯ブラシ取り違え事件とショートケーキ粉砕事件、どっちがいい?」
「ネタの在庫あるんだ」
「因みに豪華二本立ても可」

美術の清書中、向かいに座る桃と毒にも薬にもならないにも程がある会話を織り成す。と、不意に隣の男子グループから視線を感じる。

横に首を回すと、途端に男子達はそそくさと正面に向き直る。

何だろう。

「ちょ、俺は無理だって」
「じゃあお前聞けよ」
「やだよ。気まずいじゃん」

密談内容はさして実りがない…というより、何やら押し付け合っている?

声をかけようかまごついていると、向かいから冷徹な
刃が頭を覗かせる。

「宮美瑠奈の連絡先なら知らないよ」

恐ろしく素っ気ない呟き。
案の定、桃は筆を走らせる片手間に男子をあしらう。

「あんた達ずっとグラウンド見てたでしょ。確かに一緒のクラスだったけど大した親交はないから」
「そ、そうですか」

抵抗の余地なく切り捨てる桃に委縮する男子達は背中を丸めて片付けを始める。一人状況がよくわかっていない私は、腰を上げつつ桃に耳打ちをする。

「何で用件わかったの、エスパー?」
「何でも何も何遍同じこと聞かれてると思ってんのよ。あの子とそこそこ関わりがありそうでかつ手近な女子が私しかいないからって。ほんといい迷惑」

手近ではないと思うけどなあ、寧ろよく勇気出したよ、とパレットを洗いつつ窓の外に目を向ける。

二年生の女子が体育をしているグラウンド…その中で一際目を引く存在が。