満天の君と、純白のヒメゴトを。

第一話 あの子は可愛いお姫様

学校のアイドルである樹々瀬くんの秘め事の深層に触れた日から一夜。

朝日に目を細めつつ、いつも通り電車に揺られ、いつも通り最寄りの駅から学校まで歩き、いつも通り校門をくぐる私は…激しい羞恥心に苛まれていた。

羞恥心の正体は、紛れもなく昨日の自分自身。
昨晩の樹々瀬くんへの身の程知らずな発言を思い出しては悶える。思い出しては頭を抱える。何度これを繰り返したことか。

あの時の言葉に何一つ嘘はないけれど、確実に出しゃばり過ぎた。健気なヒロインが言って初めて意味が生まれる言葉を、私如きが口にするんじゃない。

本当に愚か。愚かすぎて泣きそう。

遅効性の後悔に身を焦がされるほどには自分の立場に慎重に過ごす癖が身についている自負はあるのに…悲しいけれど。

一番の問題発言は「私の前ではありのままでいてください」。半分勢いからの発言なのは否めない。けれど百人中百人が私から樹々瀬くんとの交流の継続を望んだと解するに違いないのも否めない。

本当にとんでもない申し立てしてくれちゃって、昨日の自分。

道端で再度頭を抱える私の肩に、「ひとみー」と手がポンと乗せられる。軽やかに登場した桃は私と目が合った途端口を歪ませる。

「…なんか変なんだけど、顔とかオーラとか」
「そうでしょうか」
「あんたの近くだけじめってんのよ。鬱陶しいこと限りなし」
「もうさ、世界から昨日がなくなればいいのにね」

躊躇なく「はぁ?」と漏らす桃は、顔が変は流石に悪口、と反抗する元気もない私を訝しげに見下ろす。

「もしかして、あいつか。泉太陽か」
「何で」
「放課後がどうのって唆されてたじゃん。やらかし内容によっては突撃からのアッパー喰らわすけど」
「ダメダメダメ桃さん、泉くんを何だと…」
「悪い虫」
「せめて人間にしてあげて?」

やっぱり異様に対泉くん用警戒心を働かす桃を宥めていると、背後で歓声が上がる。

あ、まずい。

そう思った時にはすでに人垣が形成されていた。
下足へと伸びる道に従って、登校中の生徒が列をなす。