満天の君と、純白のヒメゴトを。

黄金比を再現した彼の肢体を映し出す、三日月と半月の中間の…名前が定かでない月を私はそっと指差す。

「今こうして私たちを照らしてくれている月だって、昨日と今日と明日とでは全く違う形をしていて…それでも輝きには優劣はつかないし、変わらず綺麗じゃないですか。それとおんなじです」

一歩一歩踏みしめるようにして、段差を上る。
観客のままは嫌だ。役に縛られて舞台の上で震える彼を助けたい。

「だから。私の前では、ありのままの樹々瀬くんでいてください」
「ありのまま…良いんですか?」
「月だって夜は輝いていても、陽の後ろに居る時は休んでいます」
「そっか…月か」

途端に、それまで迷い惑っていた光が弾ける。

不安も寂しさも蒸発して現れたのはー爛々と楽しげに瞬く唯一無二の輝きだった。

笑った。
樹々瀬くんが笑っていた。

初めて見た彼の笑顔は一等星よりも眩しくて、月よりも清かな純粋さを纏っている。