満天の君と、純白のヒメゴトを。

蕾が開くように露わになった寂しさの正体は、想像以上に燻されたものだった。

「だからありのままの自分なんて、要らないんです。自我なんて邪魔になる。辛くても苦しくても、求められる完璧な”樹々瀬灯’’を演じる。それしか、出来ることがないんです」

いやに冷ややかな口ぶりの樹々瀬くんを見上げる。その姿はどうしようもなく眩しいのに、脆い。

「たとえそれが、嘘と虚構で塗り固められた紛い物だとしても」

もう、清廉で完璧な男の子なんてどこにも居なかった。目の前に居るのは、年相応に憶病で淡くて弱い普通の男の子だけ。

それでも、樹々瀬くんは樹々瀬くんだった。

彼の背後に迫る車が光度を上げる。それはまるでスポットライトのようで…。

私には目線の上で立つ彼が、孤高に震える足で舞台に上がり続けているようにしか見えなかった。

「紛い物なんて…そんな悲しいこと、言わないでください」

一人にしたくない。その思いに弾かれるように、私は腰を上げる。

立場の相違だとか分際とかは頭になかった。

ただ、秘密を知ってしまった私にしか届けられない言葉があるからーー。

「ありのままの樹々瀬くんだって素敵です!」

耳を疑うように繰り返し瞬きをする樹々瀬くんは、舞台の上で固まったまま、真っ直ぐに私の目を見つめる。

「あの時階段で差し伸べてくれた優しさも、倉庫で私を受け止めてくれた優しさも、どっちも同じだけ温かかった!どっちか片方が嘘だなんてこと、絶対にないです。絶対に」

正反対の素性と偶像。その本質は共通している。泣きたくなるような温もりでいっぱいだった。