満天の君と、純白のヒメゴトを。

その問いかけに振り返ると共に醜態の元凶が開封される。
埃が夕暮れの中舞い上がる中現れたのは、巨大な紙の束だった。

一枚手に取り広げてみると、塗料を惜しみなく使って描かれたお城が視界いっぱいにそびえ立つ。北欧の風薫る城構え、庭園に咲く色とりどりの薔薇。裏面には小さく「演劇部寄贈」と記されている。

「劇の背景、ですかね」

私の言葉に樹々瀬くんが資料に落としていた目を上げる。

「これですよ、太陽が言っていた備品」
「えっ本当ですか!?」
「はい。文化祭で演劇をする団体が年々減少しているのもあって、記載しなかったんでしょう」

確かに、書面のどこにも演劇に触れている箇所はない。

注意力散漫さが奇跡的に役に立ち、一人胸を撫で下ろす。

と、紙だらけの箱の中に立体物がちらほら混ざっていることに気付く。指輪や魔法の杖、王様の威厳たっぷりな付け髭の中に、一際煌びやかな装飾品を見つける。

…ティアラだ。

幼心が擽られ思わず手に取る。銀色の枠に囲まれた大きな石が、掌の上で淡く輝きを放っている。

「綺麗ですね」

あまりにも優しいその声に、私は己が高貴な象徴を手にしている状況が途端に恥ずかしくなり、反射的にティアラを手放す。

「い、いやこれは、昔プリンセスが出てくるお話が好きだっただけであって」
「プリンセス、ということはおとぎ話ですか?」
「おとぎ話…すごく好きでした」
「今は違うんですか?」
「ん…そうですね。現実を知っちゃいましたから」

私は唇の端を持ち上げ、行き場を無くした掌同士をぎゅっと握り合わせる。

「おとぎ話のお姫様はみんな、愛されて然るべき人達なんです。容姿も内面も、生まれ持ったすべてが特別。所謂ヒロインと呼ぶに値する、可愛くて心根が強い姿に虜になりました。けれど、徐々に身の丈を自覚して…『自分はヒロインにはなれない、お姫様なんて似合わない』…一度そう悟ったら、平々凡々な自分が特別な何かに憧れること自体が滑稽極まりなくって、疲れたんです」

意図せず混じった湿っぽさを笑い飛ばす。しかし、そんな私の自嘲は真面目な声音に制される。

「少し、わかる気がします」
「え」

思わず間抜けな声を漏らす。

顔を上げると、樹々瀬くんの涼し気な目元に影が落ちていた。樹々瀬くんはそのまま床に広がる宮殿に物憂げにそっと触れる。

「そういう類の物語の中には、魔法の力を借りて変身した姿で出会った人と恋に落ちる…なんて展開のものもあるじゃないですか。最後には正体が明らかになって、それでも確固たる愛が二人の間に芽生えているから結ばれる、めでたしめでたし…という」
「好きでした、王道に甘くて」
「以前はそうでした。でも、この頃疑問に思うんです」

そう言い、樹々瀬くんは城壁から手を放す。まつ毛に隠れる視線が露わになるとともに、あの悲し気な光が再び私を真っ直ぐに貫く。