満天の君と、純白のヒメゴトを。

「繭菜!」

底抜けな意気揚々さに恐る恐る振り向く。案の定教室の中から泉くんが手を振っていた。

隣で桃が臨戦態勢を整えたのを見て、私は慌てて泉くんに駆け寄る。

「な何でしょう…??」

我ながら白々しい問いに、泉くんはニヤニヤする。

「さすが繭菜。目ぇ泳ぎまくり、素直か」
「うっ」
「詳細はさておき、放課後生徒会室に来てくれる?」

企みを内包した笑みに樹々瀬くんのことだ、と察する。何となく嫌な予感がする。

「あのことは誰にも言ってないよ。だから心配しなくて大丈夫」
「そこは信用してるから。それとは別…うん、まぁ若干別の用事」
「絶対例の件だよね?」
「詳細はさておくって言いましたー」
「絶対例の件だよね?」
「…来たらわかるっ!だから来て!!じゃあなっ」
「あっちょっと!」

泉くんの強行突破を防げず、生徒会流しが確定したことで、暫く落ち着いていた思考が再び掻き立てられる。この一週間、折に触れて樹々瀬くんのことが脳裏を過り、特段疑問に思ったことがある。


どうして、彼は本来の性格をひた隠しにしているのか。


誰でも人には見られたくない一面はある。けれど、樹々瀬くんのそれは、あまりにも異常な気がした。

正反対の人格でまるで自分に蓋をしているかのような。

そもそも私如きが樹々瀬くんのことをわかろうだなんて烏滸がましいのかもしれない。
だって何の因果か、私は偶々あの場に居合わせて、偶々秘密を知ってしまっただけに過ぎない。元々は天と地ほどの差がある世界の住人同士。

…その偶々に頭を悩まされているという事実は否めないけれど。

勝手に雁字搦めになりながら、桃に訝し気な視線を送られる一日を過ごした私は約束通り生徒会室の敷居を跨ぐ。

「失礼します…」