満天の君と、純白のヒメゴトを。

この声、泉くん?

「だってわかんないもんはわかんないんだよ!」
「初めて教えるならいいよ?これ3回は説明したんだけど。全く同じ説明を3回も!」
「仕方ないじゃん。勉強苦手なんだから!」
「開き直るな。忘れるな。覚えろ。呼吸するよりも先ず暗記しろ」
「もうヤダ。もっと優しくして、怖い」
「はい~?どの分際で文句言ってんだ、このバカ」
「バカって言った方がバカだよ!バカ太陽」
「二秒前の己の発言すら忘れてんじゃねぇよマジで」

男子同士の口論がドアの隙間から漏れてくる。

修羅場?喧嘩?止める?そもそも立ち聞きもよくないんじゃ…。

一人あたふたしていると、ガタっと勢いよく椅子を引く音が鳴る。

「もう拗ねた!!太陽のあほっ」

拗ねるのって自己申告制なんだ…なんて思っていると急に視界に光が差し込む。

扉が中から開けられるのに合わせて、ノブを掴んでいた腕ごと引きずり込まれる。

「わあっ」
「え」
「何だ!?」

三者三様の反応の中、私は前に立つ人物の胸に顔を埋めざるを得なかった。なんかこの体勢既視感が…。

偶然というべきか何かしらの力が働いているというべきか。見上げた先の光景に私はまたもや既視感を覚える。

「樹々瀬くん…?」

愕然とする私。天井を仰ぐ泉くん。そして青ざめる樹々瀬くん。室内には他に誰もいない。

新種の怪奇現象ではない、よね。多分恐らく。

ということは…泉くんの口喧嘩相手は…駄々っ子の如く喚いていた男子は、あのクールで静謐、みんな憧れの樹々瀬くんだった?

思わぬ真実に脳の処理速度が追い付かない。

理想と現実の狭間で揺れる16歳。
私は、どうやらとんでもない秘密に首を突っ込んでしまったようです…。