マリとリエはArge〜私達は本当の恋がしたい〜





 ゆりあとケイは学校行事の係員として呼び出しがあったため、私は先に帰路していた。

 雨は鮮烈で、儚い。あたしは今、2人に2人でいられると困るんだ。

 「どうしてこうなるかな…」

 リビングに置いてある大きすぎる液晶ではないスクリーンに、デカデカと、こうも大きいかというくらいに、ハルサメレオンは映し出されていた。

 あたしも手を伸ばしてみた。
 きっとダンスのワンカットであろうそれが、今のあたしには歯を食いしばっても無駄なくらいで、ズタズタに服を貪りたい願望の敵わない硬い硬い革のスカジャンのようであった。

 苛立ちでもない、歯がゆさでもない、この気持ちを何と言うのかなんて、生まれた頃から忘れ去らされていて。

 「ゆりあがケイで、ケイがレオンでレオンが俺様で…?」

 最後の一句しか合っていないであろうことはわかっていても、頭のどこかが一致をさせてくれない。

 「あー、っもう!」

 頭をむしゃむしゃっ、としてみた。…何も湧くはずがなかった。



 【レオン様】

 そんな人物、いたっけな。いたな、ああ…いたんだよ。とうの前に。
 あたし達の前から消えて数ヶ月。ずっと昔の気がしていた。世間様を悪い方向へ騒がせる事もなく、18年、よくやったよキミは。

 「そんなキミがあたしは誇らしいよ」

 言ってやったぜ、と言わんばかりにキメ顔をしてやった。


 あたし達の春雨レオンは、数ヶ月前に学園から消え去った。在籍がどうこうのお話ではない。完全不登校、というやつでもない。どうやらたまに登校はしているらしい、が、見た生徒もおらず…噂でしかないと言う者もいる。

 というのも、17にして、お仕事に専念を始めていたらしい。その結果がこれだった。


 「ゆりあに一言でも言ってったのか」

 だとしても、得られる情報源がココ、スクリーン上でなんて馬鹿げている。そもそも違う国の人だから、雲の上の人だから…なーんての、あたし達には無いんだから。

 ゆりあは、あたし達のゆりあはね、

 「姫によくも」

 お姫様なんだから。傷つけていたのなら、許さない。


 フィギュアや漫画やポスターで飾られたこのフロアに、あたしは大の字で寝転んでやった。


 「いつもの紅茶、入っていますよ。ミルク多めです」

 「はーい」


 マリはテーブルにのったそれをうながしてきた。リエは食器を濯いでいた。