マリとリエはArge〜私達は本当の恋がしたい〜

 pm03:27



 友人宅へ、漫画を持ち込む。かの友人はafternoon tea中だ。これはまあ優雅に。

 私は勝手にアニメを流した。これを逃すまいと、準備をして来たのだけれど、リビングのテーブル下に散乱としている雑誌が気の邪魔をした。
 しようがなく尻にでも引くかとも思ったけれど、それも叱られる。片付けるかとも考えたが、それはそれで彼女に怒りに触れることが目に見えた。
 しようがない。

 期間限定、春休み間の贅沢で、個室という名の一人暮らしを与えてもらっている。かのこの家、私の隣の家が、友人宅である。



 pm06:02

 アニメを新話まで見終わった。ネットで名作だと話題になっていただけに、見応えがありすぎた。
 一見オムニバスにもとらえられるものの、一遍として物語は進んで行く。心が複数に分かれた世界線を一つの世界で一人の人間として生き抜いていく。いわば主人公の群青劇であった。

 「ふう」

 友人はというと、いない。
 隣の部屋からは良い匂いがする。夕食である。ダイニングにはクリスマスの時同様に豪華な食卓が彩られていた。季節はまだ春だというのに。

 友人はちょうどイスを引くところだった。長い栗色の髪を靡かせて、ふわり、と座った。私はというと、良い匂いに誘われて隣の席に並んだ。

 「どうだった?」
 「それなりの展開だったよ」

 「これ、」

 アニメの感想を聞くや否や、唐突に手渡された。
 深緑色の、封筒に白い蝋。

 「何か、ない?」
 「何かって?」
 「残したこととか」

 残したこととは…咄嗟にスマホを手にする。新着画面には、仲睦まじい様子の写真が送られて来ていた。

 友人が席を離れ、リビングへと消えた。無言でふわり、と消えてゆく。

 「ちょっと…!!」

 私たちのために用意された食事は、最後の晩餐を飾るかの様に色鮮やかだった。匂いも温かな湯気も立ち込める。友人の残していった風や空気もまた、ふわり、という具合に優雅で雅かなものであった。

 残されたものは多く、大きい。



 写真を撮った。
 『季節外れのクリスマス⭐︎映えてるでしょ、』
 そんな文句を添えて。返信をした。