マリとリエはArge〜私達は本当の恋がしたい〜

 pm04:15


 afternoon teaを提げに行ったところだった。

 侍女にダイニングで封筒を手渡された。今夜はディナーを頼んでいたのだった。彼女は忙しなさを見せる様子もなく、それは手際良く事こなしていた。
 その間の事だった。ディナーまでに此れに目を通して欲しいとのことだった。

 それは昔懐かしい封筒である。色合いも質感も、筆跡も。何も変わらない。どれをとっても、とても懐かしさを感じざるを得ない品物であった。

 それは必要な頃にやってくる。



 -ランチもディナーも、子供の私にとってはとても華やかで厳かで、大変雅かな催物。荘厳な屋敷に集う方々は、言葉では言い表せない程に煌びやかであった。その中に、私と同じ年頃の子が幾つかいた。-



 あの頃にもいた友人はリビングで熱心に、今流行りだというアニメを見ていて私が居なくなったことに気が付かない。
 友人も、私の中ではまだあの頃のまま。変わらない。

 良い香りが立ち込めてくる。
 じっとしていられなくて、何か手伝おうかと申し出たが、ゆっくりしていて下さいのことだった。

 仕方がなく、封筒を手にリビングへと戻った。
 中身を見ても良いものか、わからない。あと数十分、数時間後までには目を通さなければならない。心の忙しなさから友人を見つめた。当の本人は何も気が付かない。微動だにもしない。

 1時間が経過していた。床に散らばった雑誌等を見つめるか、友人の影から映るアニメを盗み見るかをして。
 そして最後の一杯を注ぐ。紅茶も冷めていた。

 そんな時に、連絡が来た。
 メッセージには「Deep GREEN」
 封筒と同じ。差出人の名である。



 もう読んだのかしら。気になってしようがないのに、開く勇気がまだ出ない。

 「お読みにならないのですか」
 「ええ…」
 「では、食後に。前菜でもいかがですか」

 背後から、足音も気配もなく壮麗と佇む侍女。ダイニングには、出来立ての香りが立ち込めていた。

 「やけに豪勢ね」
 「ええ、お嬢様の為と気合いが入ってしまいまして」
 「ありがとう。一人で大変ではなかったの」
 「いえ、お嬢様の為ですから」

 ダイニングでイスを引かれているところだった。友人がキラキラとした眼差しで、顔を出した。

 「お嬢様。こちら、お嬢様からお願い致します」

 前菜のスープが温かな食卓の始まりの合図みたいだった。

 友人が隣に座る。
 同じ代物をそっと、手渡した。