暦が変わる前に、彼女は産声を上げた。
都内の一等地とも言えないところで、特別扱いを嫌った母の元、一般の方と同列の産科院で生まれた。
彼女の母は駆け出しの女優であった。そこそこ売れ始めた頃にできた、一人娘であった。母の名は加代子。父は西洋人であった。
しかし、周囲は同列を嫌っていた。
産声を上げた彼女は直ぐさま取り上げられ、一族の籠の鳥となった。母から取り上げられたのではない。スクープ記事に上げられたわけでもない。生まれながらに纏った宿命というものが、彼女を取り上げたのである。
年越しに盛大なパーティーが行われた。
その主役は、彼女である。また母も盛大に祝われた。産むことだけに重圧を掛けられていた彼女もまた、宿命と闘っていた者であった-
ひとつ、またひとつ、年を追う。
次第にパーティーは何故かクリスマスのみとなった。何故ならば荘厳が過ぎたのだ。
これでもかというくらいのお肉を大人たちはむしゃぶった。普段はベジタリアンを名乗るでもあるかのような立ち振る舞いも、この日だけは拭えなかった。
蝋燭だけでこの屋敷、いや敷地全てが燃え尽きそうであった。-ハリケーン並の豪雨が来ない限り。
皆踊り狂った。
その仮面の下には何が繕われていようと構いもせず、夜な夜なお喋り通した。




