「コノミ……」
――誰かを、助ける。
誰かを助ける存在に、ならなければいけない。
それが自分の運命だ――。
そう自分で誓いを立てたコノミ。
公園で出逢う、行き場に迷った魂達。
彼等には天に登る道を、導いて教えて、助ける。
悩んでいる友達は必ず話を聞いて、助ける。
助けてと、自分に言う人は……みんなを助ける。
だから、ナギサも助ける……。
助ける……?
違う。
「……ナギサくん……助けて……」
ずっと辛くて苦しくても、誰にも助けを求められなかった。
助けを求めたら、もっとガッカリされて、もっと価値がなくなってしまう。
コノミは腐りきって、土の中でドロドロと崩れていく……。
そう、思って誰にも助けを求めないって決めていた。
でも……。
ナギサを助けたいと思って、今日、此処に来た。
でも……。
助けてほしい。
彼と一緒にいて、救われるのはコノミだった。
彼と一緒にいると、楽しくて幸せで嫌なことを全部忘れる。
梅雨鬱々倶楽部の時間が、ほんの少しの時間が、救いだった。
誰かを助けるつもりでいても、心は孤独で孤独で寂しくて堪らなかった。
価値のない自分でも認めてほしかった。
ナギサだけは、コノミを見てくれた。
手を握ってくれた。
価値を見出してくれた。
そんなナギサがいなくなったら……。
助けて……私を誰か……ナギサくん……助けて……。
「助けてよぉ……ナギサくん……もう……一人ぼっちは……いや……だよ……」
「コノミ……」
ボロボロとコノミの頬を、大粒の涙を伝う。
「ナギサくん……助けて……」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
オオオオオオオオオオオオオオオオン
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
その瞬間が来た。
生贄が喰われる時――。
「ナギサくんーーーー!!」
「コノミ………………!」
泣き叫んだコノミの頬に散る涙。
鯨の飛沫。
ナギサの命と梅雨の雨。
世界が真っ白に染まる――。



